制作 2026.09.05
士業にホームページは必要か|
「作れば相談が来る」が成り立たない理由
「そろそろホームページを作ったほうがいいのだろうか」——士業の先生から、よくいただくご相談です。
制作会社に聞けば「作るべきです」と返ってきます。私たちもホームページを作る側なので、本来なら同じことを言う立場です。
ただ、正直に申し上げると——士業の場合、作っただけでは相談は来ません。他の業種以上に、その傾向がはっきりしています。
この記事では、まず「なぜ士業は難しいのか」をお伝えします。そのうえで、それでも作る意味がある場合と、正直あまり意味がない場合、そして作ると決めたなら事前に決めておくべき3つのことを整理します。
まず、士業は「検索される回数」がとても少ない
ここが出発点です。ホームページは検索から見つけてもらう入口ですが、そもそも検索される回数が少なければ、どれだけ良いサイトを作っても人は来ません。
士業の業務は、人生や事業の中で何度も起きることではありません。相続は一生に数回、会社設立は一度きり、許認可の申請も頻繁ではない。飲食店や美容室のように「今日どこに行こうか」と毎日探される業種とは、根本的に構造が違います。
飲食店なら「エリア名+ランチ」で毎日何百人も検索します。一方、税理士を探す人はそのごく一部です。母数が桁違いに違うということを、まず前提として押さえておく必要があります。
この事実は、士業のホームページを考えるうえで避けて通れません。「作れば見てもらえる」という前提が、そもそも成り立たないのです。
それでも、探している人は確実にいる
では意味がないのかというと、そうではありません。ここからが大事な話です。
士業を探す人の数は少ない。しかし、探している人の切実さは、他のどの業種より高い。
- 親が亡くなり、相続の手続きをいつまでにやればいいのか分からない
- 税務署から通知が届いたが、何を意味するのか分からない
- 従業員を雇うことになったが、社会保険の手続きが分からない
- 補助金の申請期限が迫っているが、書類が書けない
こういう方は「なんとなく」検索しているのではありません。困っていて、いま解決したくて調べています。そして1件あたりの金額も、飲食店の来店1件とは比較になりません。
つまり士業のWeb集客は、「たくさん集める」商売ではなく「少なく、確実に届く」商売です。月に何百件も必要ありません。月に2〜3件の相談が増えれば、事業としては十分な変化になります。
「事務所名+士業名」だけのサイトは、なぜ効かないのか
多くの士業サイトが、こういう構成になっています。
- トップページ(事務所の理念)
- 業務内容(「税務顧問」「相続」「その他」と箇条書き)
- 事務所概要
- お問い合わせ
間違ってはいません。ただ、これではすでに事務所名を知っている人しか来ません。紹介を受けた方が「どんな事務所だろう」と検索して確認する——その用途では機能します。しかし、新しい相談が生まれることはほとんどありません。
理由は単純で、困っている人は「税理士」と検索していないからです。
実際に打ち込まれているのは、こういう言葉です。
- 「親が亡くなった 手続き 順番」
- 「相続税 申告 期限 過ぎた」
- 「会社設立 費用 合計 いくら」
- 「建設業許可 要件 わからない」
- 「インボイス 免税事業者 どうすれば」
「業務内容」ページに「相続」と一言書いてあるだけでは、これらの検索には届きません。お客様が使う言葉で、その困りごとに答えるページが必要です。
ホームページを作る意味がある場合/ない場合
正直にお伝えします。すべての士業事務所にホームページが必要かというと、そうとは限りません。
作る意味が大きい場合
- 紹介以外の経路がほしい:いまの相談がすべて紹介経由で、量を自分で調整できない
- 受けたい分野がはっきりしている:相続に力を入れたい、建設業の許認可を増やしたい、など
- 断りたい案件がある:紹介だと分野外や条件の合わない依頼も受けざるを得ない
- 開業して間もない:実績を伝える場所が他にない
- 単価を上げたい:紹介では価格観が先に決まってしまっていることがある
正直、あまり意味がない場合
- すでに手一杯:これ以上受けられないなら、集客より業務効率化が先です
- 更新する時間も意思もない:作って放置されたサイトは、かえって印象を悪くします
- 「とりあえず名刺代わりに」だけが目的:それなら1〜2ページで十分で、大がかりな制作は不要です
- 問い合わせが来ても返信できない:後述しますが、ここが崩れると全部が無駄になります
制作会社としては言いにくいことですが、いま必要でないなら、無理に作る必要はありません。必要になったタイミングで作るほうが、内容も具体的になり、結果的に良いものができます。
作ると決めたら、事前に決めておくべき3つのこと
ここからが本題です。制作会社に依頼する前に、この3つを自分の中で決めておいてください。ここが曖昧なまま作ると、ほぼ確実に「きれいだけど相談が来ないサイト」になります。
① どの分野で相談を受けたいか
「何でもやります」と書きたくなります。門戸を広げるつもりで書くのですが、読む側にはこう映ります——「この人の専門は何だろう」。
相続で困っている人が探しているのは「相続に強い先生」です。何でもできる先生ではありません。
絞ると仕事が減るのでは、と心配になりますが、実際は逆です。絞った分野からの相談が増え、しかも「この先生に頼みたい」という指名で来ます。絞った分野以外の相談が来なくなるわけでもありません。
迷ったら、いま実際に多く受けている分野から選んでください。すでに相談が来ているということは、そこに需要があり、ご自身にも知見があるという証拠です。
② 料金をどこまで書くか
士業サイトで最も多い離脱理由が、料金の不透明さです。
「案件によって変わるので書けない」——その通りです。ただ、相談する側が知りたいのは正確な見積ではなく、桁の感覚です。10万円の話なのか、100万円の話なのか。それさえ分かれば問い合わせできます。
書き方はあります。
- 基本料金と実費を分けて書く
- 幅で示す(「◯円〜◯円」)
- 金額が決まる要素を書く(売上規模、相続人の数、拠点数など)
- 初回相談が無料か有料か、必ず明記する
特に最後の一つが重要です。ここが空欄だと「相談した瞬間に費用が発生するのでは」と不安になり、問い合わせが止まります。
なお、士業には職種ごとに広告や報酬表示に関する会則・規程があります。ご自身の職種の規程を確認のうえ、その範囲内で最大限具体的に書く——これが目指す形です。規程は、具体的な料金表示そのものを禁じているわけではありません。
③ 問い合わせが来たら、何時間で返すか
意外に思われるかもしれませんが、これが最も成果を左右します。
Webから相談してくる方は、たいてい複数の事務所に同時に問い合わせています。そして多くの場合、最初に丁寧な返信をくれた事務所に決まります。
紹介案件では起きなかった競争が、ここでは起きています。どれだけ良いサイトを作っても、返信が3日後では他に流れます。
サイトを作る前に、「問い合わせが来たら何時間以内に返すか」を決めておいてください。そしてサイトにもそう書く。「1営業日以内にご返信します」の一文が、相談する側の安心につながります。
ページ数は「業務分野の数」で決まる
もう一つ、よくいただく質問にお答えします。「何ページくらい必要ですか」というものです。
答えは「受けたい業務分野の数だけ」です。
「業務内容」という1ページにすべてを箇条書きで並べても、どの検索にも届きません。相続の相談を取りたいなら相続のページ、会社設立を取りたいなら会社設立のページ。分野ごとに1ページずつ作ります。
各ページに書く内容は、だいたい共通しています。
- どんな状況の方が対象か
- 手続きの全体像と、いつまでに何をすべきか
- 依頼した場合の進め方と、お客様にお願いすること
- 料金の目安
- よくあるご質問
最初から10ページ作る必要はありません。主力の2〜3分野から始めて、様子を見ながら増やしていくほうが現実的です。
効果が出るまでの時間も、正直にお伝えします
公開してすぐ相談が来ることは、まずありません。検索エンジンに評価されるまでに時間がかかるためです。
目安として、公開から数ヶ月は動きが見えない期間が続きます。この間に「作ったのに意味がなかった」と判断してしまうケースが多いのですが、そこで止めるのが最ももったいない。
逆に言えば、いま必要でなくても、必要になる時期が読めているなら早めに着手する意味があります。独立を控えている、事業承継の相談を増やしたい、といった場合です。
まとめ
- 士業はそもそも検索される回数が少ない。「作れば相談が来る」は成り立たない
- ただし探している人の切実さと単価は高い。月2〜3件でも事業は変わる
- 「税理士」ではなく困りごとの言葉で探されている。分野ごとのページが要る
- いま手一杯なら、無理に作らなくてよい
- 作るなら事前に①分野 ②料金の書き方 ③返信までの時間を決めておく
- ページ数は受けたい分野の数。まず2〜3分野から
- 効果が見えるまでには時間がかかる
ホームページは、士業にとって「あれば安心なもの」ではなく、「どの分野の、どんな状況の人に届けたいか」を決めてから作る道具です。そこが決まっていれば、ページ数が少なくても相談は生まれます。
signamでは、まず現状を伺ったうえで、そもそも作るべきかどうかからご一緒に考えます。「いまは必要ないと思います」とお伝えすることもあります。ご相談は無料ですので、判断に迷われている段階でお声がけください。
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